カーボンフレームを長い間使い続けたいなら知っておくべきこと

What you need to know if you want to use a carbon frame for a long time

ロードバイクの世界で、ここ10年ほどの間に主役に躍り出たカーボンフレーム。かつては高級車の象徴だったが、現在では20万円台の完成車も登場し、身近なものになりつつある。ここではカーボン素材について紹介してく。
カーボンフレームを長い間使い続けたいなら知っておくべきこと

はじめに

近年、スポーツ用具の中で多く用いられているカーボン素材。自転車のフレームだけでなく、ゴルフクラブや釣り竿、ラケットなど幅広い用途に使われている素材だ。

この素材は、技術の進歩とともに軽量で、安く手に入れられるようになり、中級以上のロードバイクにはカーボン素材が採用されていることが多い。

しかし、カーボン素材のフレームを採用したロードバイクは決して安いものではないし、取り扱い方を多くの人が熟知しているわけではないのが現状。取り扱い方法が適切でないと、アルミやクロモリよりも早く壊れてしまうこともある。

ここではカーボン素材について詳しく紹介し、できるだけ長く使い続けられる方法を紹介する。

まずはカーボン素材とは何かを知っておく

フレーム素材に使われているカーボンは厳密に言うと炭素繊維強化プラスチック

ロードバイクで「カーボンフレーム」とよばれるフレームの素材は、厳密にはカーボン(炭素繊維)そのものではない。正しくは、プラスチックの強化材としてカーボンを用いた複合素材のCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)だ。

カーボンは単体では素材としての強度を保つことはできないため、カーボン繊維で編み込んだシートを何層にも重ねたものを樹脂で固めることでCFRPは完成する。これにより、軽く、剛性・強度に優れるという特徴を持った、多くの分野で活用される理想の素材となる。

鉄などの金属素材よりも軽く強度や剛性に優れている

CFRPはプラスチックという単語が含まれているが、実際は鉄などの金属素材よりも軽く強度や剛性に優れている特徴を持っている。一方で、金属のように疲労することもなく、カーボンそのものは紫外線にも強いため、耐久性も高い(劣化するのは表面の樹脂のみ)。

この素材は半永久的に使用できる素材として、今まで人工衛星などの宇宙分野や、航空機、風力発電の羽根など多岐にわたり重宝されていたが、1980年代から徐々にゴルフクラブのシャフトやウィンドサーフィンのマストなどのスポーツ用途として採用されるようになってきた。

もちろん、軽く、剛性・強度に優れるという特徴は自転車のフレームの素材としては最適であり、今では多くのカーボン素材を使ったロードバイクがリリースされている。

フレームの各部分によって、まったく異なる設計ができる

CFRPの特性として炭素繊維の通っている方向によって性能が変わってくることがあげられる。具体的には、引張り方向の力には強い一方で、圧縮方向の力には半分くらいの強度しかないという感じだ。

カーボンフレームは、樹脂に満たされたカーボンシートを幾重にも重ね、金型でフレームの形に成形し固めることで完成する。そのため、自転車のフレームでは、CFRPの特性を生かして、繊維を重ねる方向によってフレームの特性を変えている。

剛性を持たせたい部位や、逆に振動を吸収させたい部位など、フレームの各部分によって、まったく異なる緻密な設計がなされているのが最近のフレームの特徴だ。

夏と冬では乗り味が若干変わる

CFRPに使用している樹脂は熱を加えると変形しやすくなる性質がある。そのため、トップチューブの温度が高く上がる夏場は、CFRPの樹脂がゆるみ、樹脂と繊維の密着具合が変わるものもある(各社使用しているフレーム素材によって異なる)。わずかな違いかもしれないが、冬は固く、夏は柔らかく感じる人もいる。

カーボン素材の弱点

想定しない方向からの力に弱い

自転車に非常に適した素材ではあるが、弱点もある。想定しない方向から力がかかると弱く、具体的にはペダリング時に起こりえない方向からかかる力には脆いということ。

カーボンフレームは自転車として走っている状態を想定して設計されている。軽さを追求するためや、性能を出すために割り切って作っている部分もあり、ペダルやハンドルやサドルなど、フレームに力をかけていい場所は限定されている。

一方で想定外の方向からの力には、そこまで強くはない。

破損する時は一気に壊れる

最も大きなデメリットとして、破損する時は一気に壊れること。

転倒などでフレームに強い力が加われば、アルミなどの金属素材であれば、曲がったりへこんだりして変形するが、カーボンフレームは曲がったりへこんだりせず、一気に破断する。さらに、折れた箇所などは炭素繊維が鋭利な刺のような状態でむき出しになる。

万が一、転倒しフレームが折れた場合、カーボン繊維がささくれ立ち、鋭利な刃物のようになることがあり、通常であれば軽傷で済むはずのケガが重傷になる危険も伴う。

以前、自動車のボンネットがカーボン製になった時期があったが、今はアルミに戻っている。というのも、事故が起きた際、カーボン素材のボンネットは危険だからという理由。そのような素材だと知ったうえで、取り扱いに注意して安全に使用したい。

特に問題になる内部損傷は、損傷の具合が外側から気づかないことが多いのも難点だ。

弱点はあるが有利点が圧倒的に多い

とはいえ、CFRPがさまざまな形状を比較的自由に形作ることができる軽量素材として、自転車フレームでの需要も年々増しており、現在でも最もロードバイクに適したフレーム素材であることに変わりはない。取り扱いに注意すれば十分カバーできる内容だ。

カーボンフレームに長く安心して乗り続けるためにはどうすればいいのか、知っておき、対応するのがベストだといえる。

カーボン素材のメリットとデメリット

メリット デメリット
  • 他の素材に比べて軽い
  • 剛性・強度に優れる
  • 比強度は鉄の10倍・比弾性率は鉄の7倍
  • 設計の自由度が高い
  • 脆性破壊になる
  • 設計上想定しない方向から力が加わると弱い
  • 内部で層間剥離が起きていても表面上ではわからない場合がある

カーボンフレームを長く使うためにはどう扱えばいいのか

走行時に障害物などに気をつける

車止めの間などを無理に通らない

カーボンフレームは瞬間的な衝撃には弱い。たとえばサイクリングロードなどによくあるクルマ止めにぶつけてしまうと破損につながりやすい。

ロードバイクに乗車したまま通り抜けようとすると、シートステーをぶつけてしまいやすい。車止めや障害物がある場合は、面倒でも一旦降りてから通過するようにしたい。

また、柵と柵の間を通行する際も注意が必要。油断しているとぶつかってしまうので、できるだけスピードを落として通過すること。

トッブチューブに力を加えない

ハンドルを切りすぎない/座らない/上から物を落とさない

トップチューブは真上や真横からの力は想定していない。中央部分は積層も薄く、とても長い箇所なのでそこまでの強度はない。

例えば、ハンドルを切りすぎてハンドルをトップチューブに当ててしまったり、物を落としたりするのは、当然ながら厳禁だが、疲れたのでトップチューブにまたがって座るというのもやめておきたい。

立てかける際には気をつける

自転車を倒して縁石などにぶつけないように

カーボンフレームが壊れるのは、その多くが転倒時。乗車中はもちろん、降車後でも転倒の可能性がある。駐輪時は不安定な状態で立てたまま、自転車から離れるのは絶対に避けたい。

特に、壁に立てかける場合はハンドル、サドル、ペダルの3点で支えること。2点打と安定しないし、トップチューブを軸に電柱などにもたれかけさせると、自転車に他の力が加わってきた際、トップチューブに力が集中してしまう。様々な場面で気を配りたい。

万が一、倒れてしまったときのことを考え、縁石などにぶつからない場所に停めること。

カーボンパーツのトルク管理

シートポストを固定するときやハンドルにパーツを取り付ける際は注意

フレームだけでなく、シートポストやハンドルなどのカーボンパーツ取り付けの際にも注意が必要。フレームに関する注意点に加え、ボルト等のトルク管理も注意したい。パーツを固定する際、力任せにぐいぐい締めると、カーボンパーツへのダメージとなるので注意したい。

できれば一度、トルクレンチで適正トルクがどれぐらいなのか、感覚的にも確かめておきたい。

輪行時にぶつけない

飛行機輪行や自転車宅配時も注意

カーボンフレームを輪行するなら、アルミフレームのロードバイクよりも細心の注意を払いたい。改札を通るときはゆっくりと、曲がるときには周囲を確認してから曲がること。

輪行バッグに詰めるときはフレームパッドなどを使って保護すること。万が一、角にぶつけてしまったとしてもダメージを若干抑えることができる。

自転車の保管は屋内で

紫外線と水分に注意

カーボン繊維自体は限界を超えなければ、半永久的に持つ素材だが、CFRPだと、カーボン繊維だけでなく樹脂を内包するため、状況は違う。カーボンはへたらないし、繊維自体が弱くならないとしても、樹脂の劣化は起こる。

そのため、ロードバイクを保管する場合は、樹脂が紫外線で冒されることを想定し、直射日光がある場所は避けたい。フレームの塗装は樹脂を紫外線や水分から守る役割もあるため、塗装部分が剥がれている場合は、UVカットの塗料で補修したほうがいいだろう。

また、野外にさらしたままのカーボンフレームの表面が白くなっているものは、雨などの水分を樹脂が吸い込んだためにできるもの。基本的なことだが、雨に降られた場合は水抜きをして、表面を拭いておくだけでも長持ちする。

そのため、保管場所は最低でも屋根がある場所で、ベストは室内。

まとめ

カーボンフレームは繊細なものだが、金属フレームと同じような感覚で扱っている人がまだまだ多い。カーボンフレームは内部損傷の危険を事前に回避し、取り扱い方さえ気をつけ、衝撃さえ与えなければ、長く乗り続けられる。

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